最近話題の映画「ドライブ・マイ・カー」が気になっている方も多いのではないでしょうか。
ドライブマイカーは日本映画としては62年ぶりにゴールデングローブ賞(非英語映画賞)を受賞し、カンヌ国際映画祭でも日本映画初となる脚本賞をはじめ4冠を達成。
次々と大きな賞を受賞しており話題の作品です。
村上春樹氏の小説が原作で、もちろん日本の作品なのですが、映画を見た方はわかるようにラストの場面は韓国になっています。
なぜ韓国?と疑問を持った方もいるかもしれません。今回はそんなドライブマイカーのラストについて考察していきたいと思います。
※結末を考察しているため、ネタバレを含みます。映画をまだ見ていない方やラストを知りたくない方はお気を付けください。
関連記事:ドライブマイカー妻の秘密とは?ヤツメウナギに隠された本当の思い
ドライブマイカーのラストが韓国だった意味とは

(引用: (C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
ドライブマイカーのラストシーンでみさきは韓国にいますが、その理由やそこに至るまでの経緯は描かれていません。
なぜみさきは韓国にいたのか、その理由について考察してみたいと思います。
ドライブマイカーのラストを簡単におさらい

(引用: (C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
韓国・釜山(プサン)のマーケットで買い物をしているみさきの様子が描かれています。
みさきの表情は明るく、ハングル文字(韓国語)も理解していると思われます。
またマスク姿の人が多く、コロナ禍であると思われる状況です。
このことから、舞台「ワーニャ叔父さん」の公演から数か月~数年が経過した時代を描いていると思われますね。
みさきが運転しているのは、日本で運転していた家福の愛車「サーブ」。
同じものか、型が同じなだけかはわかりません。
この車が出てきたことで、誰もが気になるポイントは、みさきが家福と一緒にいるのかどうなのかという点。
残念ながらこちらもどういう状況なのか説明はないため想像するしかありません。
みさきは家福と一緒に韓国で新生活をはじめたのか、それとも一人で新しいスタートを切ったのでしょうか。
また、舞台「ワーニャ叔父さん」の韓国公演であるため皆で滞在中という説も考えられます。
ドライブマイカーのラストは広島ではなく韓国

(引用: (C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
映画ドライブマイカーの舞台は広島がメインでした。
家福とみさきの出会いも広島で、物語は広島の風景を中心にすすんでいきます。
実際に映画のロケも広島で行われていました。
みさきが広島の観光地や町をドライブするシーンが映画ドライブマイカーのみどころにもなっています。
しかしもともと、原作のドライブマイカーでは東京が舞台でした。
そこから映画ではメインが広島に変更され、さらにラストシーンは韓国…と変わっていく意味はどこにあるのでしょうか。
映画のロケ地は当初、韓国・釜山の予定だった
映画の中では、みさきが韓国へ渡った経緯やシーンはないため、ラストシーンは少し唐突に感じます。
その理由のひとつとして、実際の撮影のロケ地との兼ね合いが挙げられます。
実は映画ドライブマイカーの撮影は当初は韓国でされる予定でしたが、予定が変更されていました。
「原作では東京が舞台でした。しかし、東京では満足できるドライブシーンが撮影できないと韓国の釜山でのロケを予定していたところ、新型コロナの感染拡大により、釜山での撮影を断念。広島がメインのロケ地に選ばれました。」(引用:週刊女性)
もともと釜山の雰囲気をイメージしてつくられた作品ということだったので、スタッフは作品のどこかにそのイメージを残したかったのかもしれません。
母親が在日朝鮮人説
みさきの母親が在日朝鮮人だったため、母親を受け入れたみさきは母親のルーツのある韓国に渡った という説があるようです。
映画ドライブマイカーでは、家福とみさきが一緒にみさきの故郷に行く場面があります。

(引用: (C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
みさきの母親は5年前に土砂にのみこまれて亡くなっていますが、崩壊したみさきの家はそのまま残っていました。
みさきの母はみさきに暴力をふるっており、精神的にも病んでいた状態だったことが語られます。
みさきの家は雪深い丘のようなところにあり、周りに家が全くないことから、もしかすると差別されていたのでは?ということが考えられます。
その差別がみさきの母の出自に由来するものなのか、精神疾患からくるものかはわかりませんが、周囲に他に頼れる人がいなかったのは確かなようです。
そういった状況がみさきの母の在日朝鮮人説につながっているようなのですが、これもはっきりした事実があるわけでなく考察のひとつです。
ドライブマイカーの最後を想像してみる。
家福は新しい妻もしくは新しい車を見つけて、みさきに自分の大切にしていたサーブ900を渡した。
ジンとパクの間には数年して子供ができ犬を可愛がってたみさきが譲り受ける。そして母のルーツである韓国の地に赴き自分の喪失と共存してでも幸せに生きていく。— 6 (@pongpongkuma) February 27, 2022
「ドライブ・マイ・カー」ラストシーンで検索すると色々考察があるのに驚き。自分ではグラン・トリノ的ラストかと思ってたが。他にこうなのでは?と色々出てくる。なるほどな~と思わせるのはあるが、ドライバーみさきの母親は韓国人だった。だから母親の母国に行った。てのはどうなんだ?
— とみさわ千夏 電子配信準備中 (@sennatsucobu) February 23, 2022
ユンスとユナ夫妻に影響された説
舞台「ワーニャ叔父さん」で、家福とみさきはユンスとユナ夫婦と交流を深めます。

(引用: (C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
ラストの場面でみさきの運転する車の助手席には犬がおり、ユンスとユナの飼い犬または似た犬かと思われます。
ユンスとユナの飼い犬だとすれば、みさきは韓国でユンスとユナ夫婦と近い距離で暮らしていると考えられます。
新しい生活をスタートさせるにあたり、親交のあるユンスとユナ夫婦の近くを選んだのかもしれません。
また、ユンスとユナ夫婦から犬を託されている・譲り受けたという説もあります。
2人は子供を亡くした過去があるので、もしかすると新たに子供ができて、犬をみさきに託したということも考えられます。
同じ犬でないとすれば、ユンスとユナ夫婦にあこがれや影響を受けたみさきが、新しい人生では二人のような生活をしたいと思い、ユンスとユナの出身地である韓国を選び、似た犬を飼っているのかもしれません。
ドライブマイカーのラストは原作とは少し違う
映画ドライブマイカーの原作は、村上春樹氏の短編集「女のいない男たち」に収録された小説です。
公式の予告動画を引用します!実写化によって新たな魅力がうまれた作品といえます。
原作と映画ではところどころ異なる部分があります。
例えば、物語後半でみさきと家福はみさきの生まれ故郷である北海道へ訪れますが、この場面は原作にはない場面です。
みさきと家福の距離が縮まる場面であり、またお互いに過去と向き合い受け入れるという大事なシーンになっています。
また、映画のラストシーンも原作にはない部分です。
みさきが韓国にいるシーンは原作にはありません。

(引用: (C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
映画のラストではみさきの様子だけ描かれていますが、原作では舞台「ワーニャ叔父さん」を終え家福が立ち直る部分にスポットが当てられて描かれています。
家福はどうなったのか気になる方が多いかもしれませんが、どこにいるにせよ、みさきと同じように過去と決別し、立ち直り、新たな道を歩んでいるのではないかと想像されます。
まとめ
ラストでみさきの表情は明るく、現在の生活が充実しているのではないかと思わせる描写があります。
映画ドライブマイカーは、みさきも家福も過去の傷と向き合い、再生へ向かっていくといったような話です。
みさきは実際に頬に傷がありましたが、ラストではその傷も癒えています。

(引用: (C)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
作中では「傷を薄くするには手術が必要」とも語っていたため、過去との区切りを付けた後みさきは手術したのではないでしょうか。
みさきは母との過去や母の死を受け入れ、新しい人生へ踏み出したと考えて良さそうです。
色々な悲しい思い出のある日本ではなく、新天地で心機一転する意味で韓国へ渡ったのかもしれません。
みさきの幸せな未来を感じさせるラストだったのではないかと思います。
ラストについては人それぞれとらえ方が異なり、想像させるような描かれ方がされています。
原作にも映画にもはっきりと描かれていない部分なので解釈は分かれますが、気になった方は原作を読んでみることもおすすめします!
関連記事:ドライブマイカー妻の秘密とは?ヤツメウナギに隠された本当の思い